『80年代シティ・ポップの名盤40』の最終回です。今回は南佳孝、村田和人、浜田金吾、杉山清貴＆オメガトライブ、EPO、国分友里恵、黒住憲五、間宮貴子、杉真理、佐野元春のアルバムを紹介します。
これまでの回も含め、参加ギタリストのクレジットを眺めると、日本の80年代シティ・ポップが今、世界から注目されているのは、彼らのおかげなんだなぁ……と感慨もひとしおです。「この曲でギターを弾いているのはMatsukiだよ！」、「このソロはMatsubaraだよ！」と海外の人たちにも伝えたい！
文・選盤＝西山隆行 協力＝ガモウユウイチ
南佳孝
『MONTAGE』
●リリース：1980年
●ギタリスト：大村憲司、土方隆行、鈴木茂、内田勘太郎、南佳孝
YMOサウンドとの融合
アレンジに坂本龍一が参加、楽器隊はYMOメンバーや大村憲司がメインで構成され、正にYMOとの融合サウンド。斬新で予知できない高度なアレンジに乗せる大村のギターも味わい深い。「回転扉」では内田勘太郎が参加。アーチトップ・ギターでのフィンガーピッキングによる枯れた極上のトーンで、ブルージィなフレージングに昇天する。
村田和人
『ひとかけらの夏』
●リリース：1983年
●ギタリスト：村田和人、山下達郎、椎名和夫、松浦善博、吉川忠英、山本圭右、告井延隆
多彩なギター・サウンドが輝く
アコギの力強いストロークから入るアッパー曲「一本の音楽」に胸が熱くなり、グイグイと世界に引き込まれる。透明感＆力強い歌声と多ジャンルでバラエティに富んだギターのサウンド＆プレイは聴きどころ満載。山下達郎プロデュースで、サウンド面のクオリティの高さはもはや説明不要。すぐにでも海岸へドライブをしたい気分になる超推し名盤！
浜田金吾
『MUGSHOT』
●リリース：1983年
●ギタリスト：鈴木茂、松下誠、鳥山雄司
カッティング×カッティング！
ファンクやR&B的なグルーヴィ・チューンでは華やかな都会の夜を表現し、メロウなバラードでは揺れる男心を歌い上げる。パンニングで左右に振られた松下誠、鳥山雄司の高次元なカッティング・プレイが光る「RANIY HEART」は絶品だ。「GIRLS」後奏のギター・ソロではチョーキングが唸る。
杉山清貴＆オメガトライブ
『SINGLE’S HISTORY』
●リリース：1985年
●ギタリスト：高島信ニ
夏物語と爽快AORサウンド
83年デビュー、85年に解散という短い活動期間ではあったが、時代が求めていたリゾート・ミュージック的な感覚を取り入れたAOR的なサウンドがヒット。夏や海をテーマにした世界観とあいまって、世間に大きなインパクトを残した。軽快なカッティングや透明感のあるアルペジオ、高度なツイン・ギターのソロなどが◎。
EPO
『DOWN TOWN』
●リリース：1980年
●ギタリスト：原正樹、今剛、安川ひろし、土方隆行、椎名和夫、清水信之、佐橋佳幸
自身の曲も名曲揃い！
EPOのハイトーン・ボイスが響く、名曲揃いの1枚。提供曲にもヒットが多い実力派ソングライターだけに、ひとつひとつの楽曲も粒揃い。松原、土方、椎名といったギター名手がこぞって参加をしており、シュガー・ベイブのカバー「DOWN TOWN」や「日曜はベルが鳴る前に」などでのカッティングが心地良い。
国分友里恵
『Relief 72 hours』
●リリース：1983年
●ギタリスト：今剛、長田進、田附透
高次元の16分カッティング！
実力派シンガーのデビュー作で、林哲司プロデュースによる高い完成度の1枚。ファンクやソウル、ゴスペルといったブラック・ミュージックのテイストが強いトラックと、日本語詞の質感が化学反応を起こして華やかな世界を広げる。一流スタジオマンの演奏力は言わずもがなで、粘りと鋭さを持ち合わせた今剛ソロなどが圧巻。
黒住憲五
『Again』
●リリース：1982年
●ギタリスト：松原正樹、真下芳彦
パラシュート・ファンも必聴！
アーバンな香りと少年のような心、相反するような両方の雰囲気を持ち合わせた黒住の歌声が美しい1st。松原正樹のサウンド・プロデュースにより全曲でギターがフィーチャーされている。本作の松原サウンドは歪みやコーラスエフェクターの掛け具合が絶品で、太く美しい音色が素晴らしい。バックのサウンドは正にパラシュート！ ファンには堪らない作品。
間宮貴子
『LOVE TRIP』
●リリース：1982年
●ギタリスト：椎名和夫、永井充男、松木恒秀
カッティングが全てを活かす
本名義ではアルバム1枚のみを残した幻のシンガー・間宮の歌声は、シティ・ポップ再ブームの波に乗り多くのリスナーに届くことになった。憂いのある声と実力派バンドの高水準な演奏力が相まった素晴らしい世界観。ほとんどの曲で小気味良いカッティングを聴くことができ、海沿いを吹き抜ける風のような心地良さだ。歌を支える職人技なリズム・ギターが◎。
杉真理
『STARGAZER』
●リリース：1983年
●ギタリスト：杉真理、鈴木茂、芳野藤丸、吉川忠英
バラエティ豊かなサウンド
ポール・マッカートニーやギルバート・オサリバン、ビーチ・ボーイズなどに大きく影響を受けつつ、オリジナリティを追求した極上メロディ・メーカーの5th。「素敵なサマー・デイズ」、「内気なジュリエット」、「サスピション」で聴ける鈴木茂のギターが楽曲にベスト・マッチ。「春がきて君は…」では、杉の爪弾くアコギのアルペジオが良い味を出している。
佐野元春
『SOMEDAY』
●リリース：1982年
●ギタリスト：佐野元春、矢島賢、土方隆行、今剛、安田裕美、田代耕一郎、伊藤銀次、吉川忠英、青山徹、谷康一
男気が込められた名盤！
“この作品が売れなかったら、もう音楽をやめようと思っていた”と語っているように、アツい魂が込められていることが音からガンガン伝わる。50年代アメリカン・ミュージックのテイストが特徴的で、80年代を代表する名曲の1つ「SOMEDAY」のノリの良さが堪らない。「サンチャイルドは僕の友達」で聴ける、佐野自身のアコギ・バッキングは名演！
＊本記事はギター・マガジン2021年6月号にも掲載しています。
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