現代におけるギターの存在感を再定義する1枚
美しき革命の時はもうすぐそこまで訪れている
「ギター斜陽の時代」という言葉をここ数年は飽きるほど目にした。ロックの花形であり、新たな音楽の可能性を切り開き続けてきたギター。しかし昨今のヒットチャート、そして高い評価を受けるコンテンポラリーな作品を牽引し続けていたのは確かにビート、ベースであり、シンセサイザー、サンプリングであったといって差し支えないだろう。
ギターは時代に取り残された、そう思う人も少なく無かったかもしれない。しかしまたその立ち位置が大きく変わっていく予感がする。
体感としては2019年の暮れあたりから、そして2020年は顕著に、多くのポップ、ビートミュージックの中で、ギターの登場頻度は増し続け、ミックスもグッと大きくなってきた印象だ。ギターの可能性が再び大きく花開こうとしている。明確な前兆を余所に、決め手となる自信に欠けていたこの予感は、コモンのニューアルバム『美しき革命- Pt.1』を聴いた今、確信に変わり始めた。
「(A Beautiful Revolution) Intro」、アイザイア・シャーキーの美しいボリューム奏法から始まるこのアルバムには、ヒップホップ、ビートミュージックにおけるギターの存在感を再定義するプレイが数多く存在する。
まず「Fallin’」。ループ感が肝になるサウンドの中で、ギターをサンプリングする手法はこれまでもよく聴いてきたが、ここまで生々しく豊かな音で演奏され続けたリフはあまり思いつかない。そして注目するべきはタイトにループを維持している印象のドラム、ベースに対し、ギターは同じく周期的ではあるが、ニュアンスやオブリで毎回少しずつの変化を加えていること。ヒップホップの骨格となるビートやサンプルに対し、ギターはリズム的にも帯域的にもある意味で中途半端な楽器ともいえる。だがそれは逆手に取れば骨格に影響を与えないままサウンドに変化をつけられる楽器だということでもある。心地よいループ感は保ったまま、停滞を感じさせないこのアプローチのバランス感はギターならではの大きな魅力を改めて気づかせてくれるものだ。
「A Riot In My Mind」は本作のギター的ハイライト。ソロギターから始まるこの曲がバンドインの瞬間に聴かせるレンジの広がりは発明と言っていいだろう。これはイントロでの生演奏の質感に満ちたトーン、プレイの冴えがあってこそ為せる業。これみよがしなラジオトーンやバイナル風の処理を使わずとも、このような縦横の奥行きを表現し得る可能性にハッとさせられた。
ギターにとっての美しき革命の時も、もうすぐそこまで訪れている。そんな希望と力に溢れた1枚。