今回から第21回までは、「①コードを押さえる時の指使い」、「②Fコードの押さえ方と攻略法」、「③ミュートのやり方」の3つをテーマにします。
これまでの流れからははずれた内容になりますが、本講座の後半で説明すること──例えばコード・フォームを自分で作る方法など──を効率良く身に付けていくには、様々なコードをなるべく楽に押さえられるようになっておいたほうが良いので、上記の3つのテーマを挟みます。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
今回と次回のテーマは「コードを押さえる時の指使い」です。あるコードを押さえる際にどの弦をどの指で押さえるか?といったことを少々掘り下げて解説します。
はじめに
まずコードを押さえる時のごく一般的な指使いを知りたい時は、WEBアプリの「かんたんコードブック」(パソコン推奨)をご利用下さい。かんたんコードブックでは、コード名を選択すると指番号付きの指板図が表示されます。ただし1つのフォームに対して示される指番号は1通りのみです。
一方、本講座では、1つのコードを色々な指使いで押さえる方法を紹介します。特に今回取り上げるのは次のAフォームだけですが、これ1つでも様々な指使いが考えられます。
*「Aフォームって何?」と思った方は、第14回「続・コードは平行移動で覚えよう」をお読み下さい。
では本題に入りましょう。
Aのロー・コードを「3本の指」で押さえる時の指使い
以下で出てくる指板図の中のピンク色の数字は指番号です。1は人差指、2は中指、3は薬指、4は小指を表わしています。また指板図と写真は上下左右が逆になっていますのでご注意下さい。
次の図は、Aのロー・コードを押さえる時の一般的な指使いです。4弦2フレットを人差指、3弦2フレットを中指、2弦2フレットを薬指で押さえます。おそらく大抵のコードブック(本)は、この指定になっていると思います。
初心者の中には、コードブックに書かれている指使いを厳守しなければならないと思ってしまう人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。例えば同じAのロー・コードを、次のように4弦を中指、3弦を薬指、2弦を小指で押さえることも可能です。
こうした「異なる指使い」にどんなメリットがあるのかも一応説明しておきましょう。例えば弾きたい曲の中に、次のようなA-F♯m7というコード進行が出てくるとします。この時、Aを中指・薬指・小指で押さえておけば、次のF#m7は、Aを押さえたまま人差指で6弦2フレットを押さえるだけですみます。
特にアルペジオで演奏していて、前のコードの響きを残したまま次のコードに移りたい時などに、こうした指使いが有効になってきます。指使いが複数考えられる場合、そのうちのどの指使いが適切かはケースバイケースであるわけです。
さて、Aのロー・コードを3本の指で押さえる方法をもう1つ紹介します。次の図は4弦を中指、3弦を人差指、2弦を薬指で押さえたものです。
この指使いでは、中指と薬指の間に人差指を潜り込ませるような形になります。そのため、少し無理をしているように見えるかもしれませんが、実際にギターで押さえてみて下さい。案外押さえやすいはずです。
筆者自身はこの指使いを、10代の頃にお世話になったラグタイム・ギターの曲集(*)で教えてもらいました。最初こそ「変な押さえ方だな」と思ったものの、実際に試してみたら、自分にとってはかなり押さえやすかったのでびっくりしました。またその時、「コードブックに書いてある指の指定は、べつに守らなくても良いんだな」とも思いました。
*『The New Art of Ragtime Guitar』。その日本語版『ラグタイム・ギター コンテンポラリー・ギター・マスター・シリーズ』はおそらく絶版。
なおこの指使いでは、例えばAからA△7に行くコード進行の時に、人差指だけを1フレット下にずらせばよいだけなので、そうした場面でも重宝します。
Aのロー・コードを「1本の指」で押さえる時の指使い
Aのロー・コードは、押さえる弦が2フレットに集中しています。その狭いところに3本の指を並べるのは、どの指使いであれちょっと窮屈な感じになります。そこで、4弦、3弦、2弦を1本の指で一度に押さえる方法も覚えておきましょう。
次の図は、4弦・3弦・2弦をすべて人差指で押さえる例です。
ポイントは人差指の関節を逆方向に反らせて1弦をミュートしないようにすることです。
とはいえ、コードをジャカジャカとストロークで弾いているような時には、人差指の腹で1弦をミュートしてしまっても、たいして問題にはならないことが多いです。そこで上の指板図の1弦には、開放弦を意味する○の横に、ミュートを意味する(×)を書き加えました。まぁ、1弦はミュートしちゃってもいいかな、という意味です。
また、4弦・3弦・2弦を押さえる指は、人差指ではなく薬指(または中指)でもOKでしょう。
この薬指1本による押さえ方は、例えばロー・コードのEとAを素早く往復するコード進行の時に使えます。
Eで4弦2フレットを押さえている薬指を弦から離さずに、そのまま倒す(寝かせる)ことでAにするため、Aを3本の指で押さえ直したり、人差指1本に入れ替えたりするのに比べて、素早いコード・チェンジが可能になります。
Aのロー・コードを「2本の指」で押さえる時の指使い
Aのロー・コードを、2本の指で押さえる方法もあります。次の図がそれで、4弦と3弦は人差指で押さえ、中指で2弦を押さえます。筆者自身はこれを使ったことはほとんどありませんが、この指使いにも何らかのメリットはあるでしょう。
6弦のミュートについて
ロー・コードのAは、コード・ブックにおいては6弦をミュートする指定になっていることが多いのですが、6弦の開放はAコードの構成音の1つであるE音(ミ)ですので、鳴らしてしまってもコードの響きが大きく変わることはありません。よって、あまり神経質にならなくてもいいでしょう。
それでも6弦をちゃんとミュートしたい時は、ネックの上側から出した親指で6弦に軽く触れ、弦の振動を止めるようにします。
必要な弦だけを押さえればよいこともある
次の譜面はAコードをアルペジオで弾いたものです。コードはAですが、タブ譜を見るとわかるとおり、鳴らすのは5弦開放、2弦2フレット、1弦開放の3つだけです。
こうしたときは、ロー・コードのAを必ずしも完全に押さえる必要はなく、2弦2フレットを指1本で押さえるだけで事足ります。
特にギター1本でメロディもコードも同時に表現するソロ・ギターにおいては、その都度必要な弦のみを押さえることが重要なテクニックになってきます。
Aフォームのハイ・コードについて
Aフォームをハイ・コードで使う時の指使いについても言及しておきましょう。
次の図はAフォームのDです。人差指で5フレットをセーハした上で、7フレットの4・3・2弦を残り3本の指か、もしくは薬指1本で押さえます。
どちらの指使いにおいても、6弦は人差指の先端で触れることによりミュートします。
なおこのフォームは、次のように人差指で6弦も押さえてしまってもよいでしょう。こうすれば、仮に6弦を鳴らしてもその音はDコードの構成音なので問題なしです。
そしてハイ・コードのうちの一部の弦だけを鳴らせばよい場合は、次のように色々な指使いも可能となります。
次の例は3度がないコードなのでコード名はomit3に変わりますが、これもよく使われます。
今回はこれで終わりです。Aフォームでの指使いしか説明しませんでしたが、ここで説明したことは他のコードにも応用できるはずです。
次回はおもにEフォームのEやAを押さえる時の指使いを紹介します。
本講座の関連コンテンツ
指板図くんのギターコードブック
コード名を選ぶと指板図が表示されて、音も鳴らせる便利なWEBアプリ。弦を押さえる指の指定やコードの構成音も表示されるので、初心者には特にお薦めです。チューニング・モードもあり!
https://guitarmagazine.jp/guitarchordbook/
*本アプリはスマートフォン、タブレット、パソコン全対応です。
作ろう! マイコードブック
自分独自の指板図やコードチャートを自由に作れる多機能なWEBアプリ。音声機能、自動演奏機能、印刷機能、画像化機能も備え、ギター・コードの学習から、作曲、DTMまで、幅広い用途で役立ちます。
https://guitarmagazine.jp/mychordbook/
*本アプリはパソコン推奨です。
初心者だって大丈夫! コードが自分で作れちゃう! 指板図くんのギター・コード講座
本講座を書籍化した本です。オールカラーで144ページ。電子書籍もあります。
【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!