アイルランド出身の5人組“次世代ポスト・パンク・バンド”、フォンテインズD.C.。今回はリード・ギターのコナー・カーレイにインタビューを行ない、2023年2月18日の渋谷Spotify O-EAST公演で彼が使用したペダルボードについて、各ペダルの使い方まで詳しく解説してもらった。
文/質問作成=伊藤雅景 インタビュー/翻訳=トミー・モリー 機材写真=星野俊 ライブ写真=古渓一道
Pedalboard
【Pedal List】
①Radial/J48(DI)
②ToneZone LA/Pedalboard Junction Box(ジャンクション・ボックス)
③MXR/SIX BAND EQ(グラフィック・イコライザー)
④strymon/DECO(サチュレーター)
⑤strymon/SUNSET(オーバードライブ)
⑥Jim Dunlop/ Volume X Mini Pedal(ボリューム・ペダル)
⑦BOSS/RV-6(リバーブ)
⑧Ibanez/AD9(ディレイ)
⑨ThorpyFX/Chain Home(トレモロ)
⑩Electro-Harmonix/Nano POG(オクターバー)
⑪Industrialectric/Echo Degrader(ディレイ)
⑫DigiTech/RV-7(リバーブ)
⑬Death By Audio/Echo Dream 2(ファズ/ディレイ)
⑭BOSS/BF-3(フランジャー)
⑮Murder One/Momentary kill switch Pedal(キル・スイッチ)
⑯TC Electronic/PolyTune 3 Noir(チューナー)
⑰strymon/Zuma(パワー・サプライ)
⑱strymon/Ojai(パワー・サプライ)
コナーのライブ用エフェクター・ボード。各ペダルの使い方は続くインタビューで語ってくれているため、ここではボードの構成を見ていこう。
各ペダルは①〜⑮までが番号順に接続されており、⑮のアウトからジャンクション・ボックス②を経由して、アンプ裏に配置されたA/Bボックスへと信号が送られている。
後日掲載予定のアンプ紹介記事で解説するが、このA/BボックスからはアンプとPAへと出力が分岐される。
また、DI①でもTHRUアウトからジャンクション・ボックス②へと向かうルートと、BALANCEDアウトからPAシステムへと向かうルートに振り分けられる。これらの振り分けはギターごとに以下のとおり。
ギター | 信号の経路 |
---|---|
・Fender/1966 CORONADO Ⅱ ・Fender/Johnny Marr Signature Jaguar ・Fender/American Vintage II 1966 Jazzmaster | DI①→ペダルボード→アンプ側A/Bボックス→アンプ |
・Framus Guitars/Parlor Archtop Model | DI①→ペダルボード→アンプ側A/Bボックス→アンプ側DI→PA |
・Seagull/Artist Studio Burst 12 String | DI①→PA |
下の写真はジャンクション・ボックス②の入出力部分。DI①のOUTから送られる信号は、INSTとラベルが貼られたジャックへと入力されている。奥に見えるA/Bの2系統のアウトは、A=キル・スイッチ⑮のアウトからの信号、B=ペダル類がすべてバイパスされた信号となる。
この2系統を用意することで、音が出なくなる等のトラブルが発生した場合に、A/B系統を切り替えることで、不具合の原因がペダルかそれ以外かをスピーディーに特定できる。
Interview about Pedalboard
俺はとにかく“リバーブ”っていうエフェクトが大好きなんだ──コナー・カーレイ
まず、⑪のディレイ・ペダル(Industrialectric/Echo Degrader)の用途が気になりました。お気に入りのポイントや、使い方を教えて下さい。
『スキンティ・フィア』の「Nabokov」にディレイを使うリード・パートがあるんだけど、この曲を作った時はLogic(DAWソフト)に付属しているディレイのプラグインを使ってそのパートを考えていたんだ。
でも、PCで複雑な設定のディレイ・サウンドを作っちゃったから、自分が持っているディレイ・ペダルじゃ再現することができなかったんだよね。その時に出会ったのがコイツだ。
レコーディングの時にダン・キャリー(プロデューサー)が持ってきたペダルの山の中にコイツが入っていてね。独特なサウンドはもちろん、ディレイ・サウンドをホールドする機能もあって、ライブでは曲間のつなぎでも重宝しているよ。同じアルバムの曲だと「In ár gCroíthe go deo」でも使っている。最終的に、俺が持っているペダル数個と引き換えに彼から譲ってもらったよ(笑)。
アンコールの2曲目「Too Real」でディレイ音の発振を聴かせていたのはそのペダルですか?
それはデス・バイ・オーディオのEcho Dream 2(⑬ファズ/ディレイ)かな。
ディレイの発振音って、たいてい高音域が強調された音色になるイメージだけど、このペダルはフル・レンジの発振サウンドを作ってくれる。その強烈な勢いがお気に入りのポイントだね。
あと、ちょっと前に幸運にも主宰のオリヴァー(アッカーマン)と話す機会があって、それもきっかけで使うようになったんだ。
もちろんディレイを使わない“ファズだけ”のサウンドも素晴らしいよ。「Big Shot」では純粋にファズ・ペダルとして使っているし。
③MXR/SIX BAND EQ(グラフィック・イコライザー)はどういった用途で使っていますか?
「Skinty Fia」で、ハイ・ポジションを中心にプレイするリード・パートがあるんだけど、ライブだとあまりにも耳に痛いサウンドになってしまってね。でも、その時だけアンプのツマミを変えにいくわけにもいかないから、このペダルを使ってトレブリーな部分を削っているんだ。
ツマミ周辺にセッティングのメモが書かれているペダルが何個かありますが、ライブ中に操作するようなタイミングもあるのでしょうか? 特に④strymon/DECO(サチュレーター)のVOLUMEはマーキングの位置からかなりずれていますね。
そうだね。ツマミの設定はライブ中に触ることもあるけど、会場の大きさや使うアンプによってその都度変えている感じかな。このDECOのツマミの位置は、強くサチュレーションをかけたい時の定位置だ。
俺はTwin Reverbの音量を上げた時のサチュレーション感が好きなんだけど、ライブではそこまで音量が上げられないだろう? ボリューム・ツマミで言ったら2~3が限界で、6から上なんてほぼ不可能だ(笑)。だからDECOを常にオンにして、サウンドにパワー感をプラスしているんだ。
ちなみに、Ibanez/AD9(⑧ディレイ)とかは、2種類の設定を使っている。白いマークはスラップバック・エコー、黒は「Nabokov」で使う設定だね。
2種類のリバーブ(⑦BOSS/RV-6、⑫DigiTech/RV-7)はどう使い分けているのですか?
俺はとにかく“リバーブ”っていうエフェクトが大好きで、ほかにも色んなペダルを使っていたんだけど、ライブ中に壊れることが多くてさ。その時に“もっとツアーでガシガシ使えるペダルはないかな?”って探してた時に出会ったのがRV-6だ。
これはボードに常に入っているリバーブ・ペダルで、かなり強めにエフェクトをかけている。スペーシーなサウンドが欲しい時に使っているよ。
対してRV-7は、“普通のリバーブ”と言うよりかは、もっとトリッキーな残響音を作る時に踏むことが多いかな。リバーブを逆再生させるReverseモードと、エフェクト音が短く切れるGatedモードがお気に入りだね。
作品データ
『スキンティ・フィア』
フォンテインズD.C.
ビッグ・ナッシング/PTKF3016-2J/2022年4月22日リリース
―Track List―
- In ár gCroíthe go deo
- Big Shot
- How Cold Love Is
- Jackie Down The Line
- Bloomsday
- Roman Holiday
- The Couple Across The Way
- Skinty Fia
- I Love You
- Nabokov
―Guitarists―
コナー・カーレイ、カルロス・オコンネル