ドイル・ブラムホールIIのペダルボード ビンテージ・サウンド指向のエフェクター選び ドイル・ブラムホールIIのペダルボード ビンテージ・サウンド指向のエフェクター選び

ドイル・ブラムホールIIのペダルボード 
ビンテージ・サウンド指向のエフェクター選び

ドイル・ブラムホールIIのペダルボードを紹介! 2023年4月のエリック・クラプトン来日公演のために選ばれた、ビンテージ・サウンド指向のエフェクターの数々を見ていこう。

取材・文=菊池真平 撮影=星野俊 協力=マティアス・ヨハンソン、前むつみ

Doyle Bramhall II’s Pedalboard

ドイル・ブラムホールIIのペダルボード

【Pedal List】
①Jim Dunlop/DVP3 Volume (X)(ボリューム・ペダル)
②King Tone Guitar/King Tone Wah Prototype(ワウ)
③Tinsley Audio/Sir Henry(ビブラート/コーラス)
④Prescriptio Electronics/Experience(オクターブ・ファズ)
⑤Acid Fuzz/Italian Fuzz Compact(ファズ)
⑥Acid Fuzz/The Zoink Machine(ファズ)
⑦TC Electronic/Polytune 2 Mini(チューナー)
⑧Prescriptio Electronics/C.O.B.(オクターブ・ファズ)
⑨L.A. Sound Design/PI-01(ジャンクション・ボックス/バッファー)
⑩King Tone Guitar/The Duellist(オーバードライブ)
⑪Prescriptio Electronics/C.O.B.(オクターブ・ファズ)
⑫Ibanez/EM-5 Echomachine(エコー)
⑬strymon/FLINT(トレモロ/リバーブ)
⑭Ivor by Dustin Francis/Fuzz Face Replica(ファズ)
⑮King Tone Guitar/Battery Billionaire(パワー・サプライ)
⑯Voodoo Lab/Pedal Power 2 Plus(パワー・サプライ)
⑰MXR/Carbon Copy(ディレイ)
⑱BOSS/BD-2(オーバードライブ)
⑲Voodoo Lab/Pedal Power X4(パワー・サプライ)

エリック・クラプトンとは対照的に、足下にかなりの数のエフェクターが並んでいたドイル・ブラムホールII。歪みはアンプではなく、ペダルで作っているため、複数台のファズを含めドライブ・ペダルが多い。これだけエフェクターが並んでいてもスイッチャーを使っていないため、すべて直列と思われる。

ちなみにこのペダル・ボードは、ギターやアンプ、エフェクターのリペアやモディファイなどを行なっている、ロサンゼルスの“L.A. Sound Design”が手掛けているようだ。クライアント・リストを見ると、音にこだわりのあるトップ・ミュージシャンが名を連ねていた。

多種多様な歪みを擁するドイルのペダルボード

ここからは推測も含むが、接続順に各エフェクターを紹介していこう。まずギターからの信号はボリューム・ペダル①に入力されている、そこからワウ・ペダル②へと入る。このペダルはおそらくプロトタイプ、もしくはカスタムと思われる。その上に“Fuzz Face”と見えるが、これはIvor by Dustin Francisが作った67年製を再現した、精巧なレプリカのようだ(⑭)。ワウ・ペダル②のあとに、このファズ⑭が接続されていた時期もあったが、取材時は結線されていなかった。

ワウ・ペダルの次に接続されるのは、おそらくTinsley AudioのSir Henry(③)と思われる。このペダルは日本が誇る名機、Uni-Vibeを再現したコーラス/ビブラートだ。

このあとは、いくつかのファズへと接続されているようだ。まずPrescription Electronics Inc.が作るオクターブ・ファズ&スウェル(揺れを含んだファズ・サウンド)の④。これは古いバージョンと思われ、現行品とデザインが異なっている。

さらにAcid Fuzzのファズで、トーン・ベンダーを参考に開発された⑤やドイルのリクエストで作られたという、John Hornby Skewesが作った世界初のトーン・ベンダー・レプリカとも言えるZonk Machineのクローンを小型化した⑥も設置されていた。

その後、TC Electronicのチューナー⑦、現行品とは異なるPrescriptio Electronicsのオクターブ・ファズ⑧を経由し、L.A. Sound Designオリジナルのバッファー&ジャンクション・ボックス⑨に入力されていると思われる。おそらく、バッファーを経由すると音質が変わってしまうファズ類を前段に置いているのだろう。

⑨のセンド端子からの信号は、King Tone Guitarのオーバードライブ⑩(ドライブAは、製作者所有のオリジナルTS808をベースにしたサウンド)、Prescriptio Electronicsのオクターブ・ファズ⑪、Ibanezのエコー⑫、人気の高いstrymonのトレモロ&リバーブ⑬へとつながっていると思われる。

そして、FLINTからは2系統が出力されているため、ジャンクション・ボックス⑨のリターンにステレオで戻され、そこからアンプへと送られているようだ。

また、上記のペダルに電源を供給していたのは、King Tone Guitar のパワー・サプライ⑮とVoodoo Labの⑯だ。電源にもこだわっているようで、正確なモデル等は調べられなかったが、Levitonの電源(コントロールが付いていたので、何かしら電圧等を変化させられるのだろうか)らしきモノも置いてあった。

多くのプレイヤー同様、彼も常にペダルを変えています。

最近ではOCD(FulltoneのOCDのことだろうか……今回は入っていなかった)をよく使っているようです。

また、Shin-Ei Vibe(Vibe-Broと思われる)やDoyleist pedal(King Tone Guitarでカスタム・メイドされたペダルで、今回入っていたDuellistのDrive-Aだけのモデルのようだ)も使っています。

なお、エフェクト・ペダルに関して、ライブ中はすべてドイルが操作しています。

と、マティアスが教えてくれたが、詳しいエフェクターの接続順までは回答がなかった。

また、ドイルのエフェクト・ボードの外には、もう1つ簡易的なボードが置かれ、そこではMXRのディレイ⑰からBOSSのオーバードライブ⑱へと接続されていたが、これがどのように使われていたか不明だ。この給電には、Voodoo Labのパワーサプライ⑲を使って給電されていた。

ドイルのペダルボードを見ると、ジミ・ヘンドリックスが使った機材からの影響が大きく、さらにビンテージ指向の音作りであることが推測できる。ただし、ツアーなどで移動することも多く、耐久力や安定性重視のためと思われるが、オリジナルのビンテージ・エフェクターは使っていない。ドイルのエフェクター・ボードからは、かなりシビアに音作りにこだわりがあることをうかがえる。

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