お次はフランス・パリはシャンゼリゼ劇場へご案内しよう。『Full House』に参加したジョニー・グリフィン(ts)が、当時フランス在住ということでゲスト参加、という熱い展開も見逃せない! それでは、いざギターを片手にシャンゼリゼ通りへ!
文/採譜=久保木靖
ここが演奏された場所!
Théâtre des Champs-Elysées, Paris, France
ヨーロッパ・ツアー序盤戦の最高パフォーマンス
3月20日のイギリスBBC『Jazz 625』への出演のあと、ウェスは再びドーバー海峡を渡り、3月27日に花の都フランスのパリに現われる。気品溢れるシャンゼリゼ劇場の客席には、ベルギー出身のギタリスト、ルネ・トーマや、あのジャンゴ・ラインハルトの弟ジョセフと思しき人物も着席していた。会場を興奮の坩堝へと誘ったその模様は、これまで『Solitude』でその一部を聴くことができたが、当日の演奏順にならって作品化されたオフィシャル盤CD『In Paris : The Definitive ORTF Recording』(2017年)は音質も向上しておりオススメだ。
ハロルド・メイバーン(p)以下のレギュラー・メンバーを従えた名演のオンパレードで、オリジナルの「Jingles」を始め随所に伝家の宝刀[シングル・ノート→オクターブ奏法→ブロック・コード]も炸裂! ジョン・コルトレーン作「Impressions」はスタジオ録音はないものの後期ライブにおける定番チューン。スライドをくり返すことで生み出されるグルーヴ、スリリングなインターバル・フレーズなど、ここでの嵐のようなオクターブ&ブロック・コードには開いた口が塞がらない。さらに、ボサ・ノヴァ・アレンジが施された「Here’s That Rainy Day」ソロ冒頭で聴けるダブル・オクターブ奏法、ハロルド・メイバーンがウェイン・ショーター(ts)に捧げた「To Wane」での超速シングル・ノート、「’Round Midnight」エンディングの無伴奏ソロなど、聴きどころが満載でひと息たりともつく暇がない。
終盤には『Full House』(1962年)で激しい応酬をやり合ったジョニー・グリフィン(ts/当時フランスに移住)がゲスト参加。ウェスに負けじと「Blues ‘N’ Boogie」でさまざまなメロディを引用しながら怒涛のソロをくり広げるグリフィンもあっぱれだ。割れんばかりの歓声を受け、エンディング・テーマ「West Coast Blues」をバックにメンバー紹介をするのはウェス本人である。