トラディショナルなブルース・スタイルを継承しつつ、スケールなどの音楽理論を持ち込み自身のスタイルを確立したクリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム。最新作からのソロ・プレイを参考に、彼の演奏スタイルに迫っていこう。
譜例作成/解説=安東滋 浄書=Seventh Photo by Laura Carbone
伝統スタイルと現代フィールをミックスした溌剌ギター・プレイ
伝統的なブルース・マナーを土台に現代的なフィールもたっぷりと加味した瑞々しいギター・プレイ……これが、クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラムの演奏を聴いた第一印象。最新アルバム『662』はそんなフレッシュなギター・パフォーマンスが満載されている会心作です。
ブルース系の常套句はもちろん、スケール・ライクに攻めるジャジィ&スマートなフレージング、そして時折顔をのぞかせる“シュレッド”的なテクニカル・リックなど、まさにブルースの“伝統と未来”の両面を併せ持つ若手No.1のプレイヤーと言えるでしょう。
クリーン~クランチの音色を基本に1音1音をキッチリと発音する、安定感のあるプレイ・フィールにもギタリストとしての地力と天性を感じさせられます。ちなみにピッキングはかなり強い感じ(生音もきっとデカいはず:笑)。
また、それらのブルージィ/ロッキン・スタイルにとどまらず、R&B/ネオソウル風味のスマートなコード・ワークやSSW的な弾き語りアコースティック・プレイなど、多彩な音楽アプローチを自在に操る感覚も柔軟。そして、そのどれもに瑞々しいソウルが山盛りにされている点も特筆すべきキーポイントでしょう。何よりも、そのケレン味のない溌剌とした弾きっぷりに一番の魅力を感じます。
堂々としたボーカルも含めて(←この歌唱も実にいい感じ!)、これからの現代ブルース界をぐいぐいと牽引していく(はずの)、大器の風格あり! 体躯はすでにB.B.キングと同等の風格ですが(笑)。
「662」風ソロ
明るく快走するフレッシュなブルース・マナー
最新作のオープニング・トラック「662」から1stソロの16小節間をイメージした模擬譜例(参考CDtime=1’01”~)。クリーン~クランチ気味の明るいトーンで、ブルース・フレーズを軽快にドライブさせていく演奏サンプルです。
半音チョーキングでブルージィに響かせる複音ベンド(①)、スライド絡みの素早いポジション移動(②&⑥)、5弦上のメジャー3rd音へとつなぐナイスな動き(③)、6th音からの半音ベンドを起点にしたスマートな節回し(④&⑤)など、カラフルな切り口を連鎖させながら溌剌としたプレイ・フィールで快走していきます。