元ドゥービー・ブラザーズ/スティーリー・ダンという輝かしいキャリアを誇るギタリスト、ジェフ・バクスターが初のソロ・アルバム『Speed Of Heart』を発表した。12曲中5曲が歌モノで、ゲストもマイク・マクドナルド、デヴィッド・ペイチ、ジョニー・ラングなど多数参加。スティーリー・ダンのカバー「マイ・オールド・スクール」では自身の達者なボーカルも披露。極上の音色とフレーズのギターは、存分に名手としての力量をアピールした。
そして、アルバム発売直後というベストなタイミングで、8月13日から15日までビルボードライブ東京、17日はビルボードライブ横浜の来日公演も決定している。
それでは、ニュー・アルバムについて、そして来日公演について、本人に語ってもらおう。
質問作成/文=近藤正義 インタビュー/翻訳=トミー・モリー Photo by Richard E. Aaron/Redferns
数年間をかけて温めてきたプロジェクトなんだ。
ハーイ、そっちは朝なのかな?
正午なので、グッド・アフタヌーンですね。今回は貴重なインタビューのお時間と機会をいただき、ありがとうございます。日本のギター・ファンを代表してお礼を申し上げます!
ハイ、アリガトウ。ソウデス!
まずは、最新作『Speed Of Heart』について聞かせて下さい。初のソロ・アルバムとは意外なのですが、今回のアルバム制作に至るきっかけとは?
これは僕が長い間取り掛かってきたプロジェクトでね。多くの人たちに“どうしてソロ・アルバムを作らないの?”と聞かれ続けてきた。その度に僕は“まぁ、その時が来るまで待とうか”と答えてきた(笑)。そして僕は、その適切な時というものを待っていたんだ。
アルバムを共同プロデュースしたC.J.ヴァンストンについて教えて下さい。
何年も前に、僕らはシカゴで一緒にコマーシャルの仕事をしたことがあるんだ。そのレコーディングで一緒に曲を作る機会があってね。その時に僕ら2人ならスムーズに音楽が作れるということに気づいた。もし、僕がソロ・アルバムを作ることになれば、ぜひ彼と作業したいと思ったんだ。C.J.も“それは光栄な話だ”と言ってくれたよ。
それがソロ・アルバムを制作するきっかけの1つになったのですね。
そうだね。それ以来、数年間をかけて温めてきたプロジェクトということだよ。C.J.は僕の良き友人の1人で、しかも驚異的なミュージシャンなんだ。ただ、僕らは共に多忙だったのでこのアルバムに掛かりきりというわけにはいかず、空いた時間があれば一緒にスタジオに入って作業するという形でたくさんの曲を共作していった。
そうやって、少しずつだけどレコーディングしたものを貯めていき、1枚のアルバムにしたんだ。小銭を少しずつ貯金箱に投入していき、ある程度まとまったところで銀行の口座にこっそり入金するような感じだったよ(笑)。
スティーリー・ダンのカバーはファンにとって素敵なプレゼントです。その1曲、「My Old School」ではボーカルも披露していますね。もともとスティーヴン・タイラーに歌ってもらおうと思っていたのですか?
そう、最初はスティーヴンに歌ってもらえないかと頼んで、彼にこのトラックのコピーを送ったんだ。その時に、どんな感じで歌ってほしいのか伝えるために、僕が仮のボーカルを入れておいたんだよ。そうしたらスティーヴンから電話がかかってきて、“これ、誰が歌ってるんだい?”って聞かれたんだ。“僕だよ”と答えたら、“どうして君が歌わないんだ?”と言われてね。“だって僕はシンガーじゃないから”と答えると、“いや、もう充分にシンガーだよ。これは君が歌うべき曲だ”と言われたんだよ。
スティーヴンとは長い付き合いなのですね。
旧知の仲だから彼の言葉は信じられる。それに、そもそも長くシンガーとしてのキャリアを歩んできた人物の言葉だから、そんな彼に歌えと言われたら素直にそれを受け入れるしかないよね(笑)。
あなたにとってシンガーとしての経験は?
かなり昔、スティーリー・ダンでツアーをしていた時に僕はコンサートで歌っていたんだ。だから、曲自体にはとても馴染みがあったし、この曲がパワフルなロック・ソングとなるポテンシャルを秘めていることはわかっていたんだ。この出来栄えはそれをしっかり証明したと思っている。
このアルバムで、マイク・マクドナルドと貴方の共演が実現したことは、大きなサプライズだったのですが、彼とはドゥービー・ブラザーズを脱退してからもずっと交流はあったのですか?
チャリティーのイベントやコンサートなどで色んなことをやってきたよ。
彼との共演「My Place In The Sun」について聞かせて下さい。
この曲はとても美しくて、マイケルが今までやってきたほかのどんなものとも違うものだ。それにはわけがあって、僕とC.J.はアルバムに参加してもらうにあたって2つの提案をしたんだ。1つは僕たちと一緒に作曲をすること。もう1つはこれまでやったことのない作風にトライすること。それはマイケルと同じくこのアルバムに参加してくれたクリント・ブラックやジョニー・ラングにも言ってあった。特にマイケルは素晴らしい、驚異的な仕事をしてくれたよ。
ちょっとしたサプライズになるような曲もいくつかプレイするだろう。
今回の来日コンサートはどのようなものになるのでしょうか?
ニュー・アルバムを丸ごとプレイするつもりだよ。アルバム『Speed Of Heart』を最初から最後までプレイするんだ。それに、ちょっとしたサプライズになるような曲もいくつかプレイするだろう。あと、できることならストーリー・テリングも挟みたいと思っている。今回プレイする曲のちょっとした背景やこぼれ話を聞いてもらえたら面白いと思うよ。
バンドのメンバーはどんな編成なのですか?
今回のバンドは本当に凄いメンバーを連れていくつもりなんだ。特にリズム・セクションが素晴らしいよ。ドラマーのマーク・ダミアンは稀有なスタジオ・ミュージシャンで、彼には独特なグルーヴのポケットというか、驚異的なフィーリングを持っている。彼のプレイに触発されたらもう逃げられない、そんな中毒性があるんだ。
ベーシストであり、シンガーでもあるハンク・ホートンも熱いミュージシャンで、彼はシカゴでのC.J.の長年の友人だ。ファースト・コールで多くのレコーディング・セッションに参加してきたうえ、デトロイト交響楽団でもプレイしているというアメイジングなミュージシャンなんだよ。そして、もちろんキーボードはC.J.ヴァンストン。とにかく、素晴らしいバンドであることは間違いなしだね。
日本でのライブが大成功することを祈っています。演奏するだけでなく、日本食も楽しんで、日本での素敵な時間をお過ごし下さい。
僕は日本食が大好きでね。日本に着いたらすぐにでもしゃぶしゃぶを食べに行きたいんだ。そして、そのあとは街の通りを散策したいね。日本って路上で売ってるような食べ物がみんな美味しいだろう? 僕はあれがたまらなく好きでね。それじゃ、ぜひビルボードライブで会おうね!
LIVE INFORMATION
ジェフ・バクスター featuring CJ Vanston
8月13日(土)/ビルボードライブ東京
(1st:開場15:30/開演16:30 2nd:開場18:30/開演19:30)
8月14日(日)/ビルボードライブ東京
(1st:開場15:30/開演16:30 2nd:開場18:30/開演19:30)
8月15日(月)/ビルボードライブ東京
(1st:開場17:00/開演18:00 2nd:開場20:00/開演21:00)
8月17日(水)/ビルボードライブ横浜
(1st:開場17:00/開演18:00 2nd:開場20:00/開演21:00)
※チケット購入の詳細は公式HPまで
ビルボードライブ東京公演>
ビルボードライブ横浜公演>
作品データ
『Speed Of Heat』
ジェフ・“スカンク”・バクスター
輸入盤/2022年6月17日リリース
―Track List―
01. Ladies from Hell
02. My Old School
03. Juliet
04. I Can Do Without
05. Do It Again
06. Apache
07. My Place in the Sun
08. The Rose
09. Bad Move
10. Giselle
11. Insecurity
12. Speed of Heat
―Guitarist―
ジェフ・“スカンク”・バクスター