Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)ギター・アレンジはどう考えるか Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)ギター・アレンジはどう考えるか

Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
ギター・アレンジはどう考えるか

UNISON SQUARE GARDENが約2年8ヵ月ぶりとなるフル・アルバム、『Patrick Vegee』をリリースした。今作も、疾走感たっぷりのカッティングや計算されたソロ、緻密に組み上げられたレイヤーなど、斎藤宏介による聴きどころ満載のギター・プレイが盛りだくさん。そこで今回は、“ギター・アレンジをどう考えるか”という話題を軸に、新作の魅力に迫っていこう。

取材=福崎敬太 撮影=星野俊 スタイリング=川上麻瑠梨 ヘアメイク=中井正人(DEUCE)


やりたいことはすべて落とし込めたんじゃないかな

UNISON SQUARE GARDEN(以下ユニゾン)にとって『Patrick Vegee』は前作から約2年8ヵ月ぶりのフル・アルバムですね。

 はい。でも、制作は絶えずやっていた印象なので、久しぶりな感じは全然ないですね。

今作の制作はどのような感じで進んでいきましたか?

 シングル曲が3曲たまった段階で“そろそろアルバムを作らなきゃ”という流れがあって。そのシングルを軸にアルバムを作ろう、ってなったのが2019年末くらい。それで、3人でプリプロを作って、そのあと2月くらいからレコーディングを始めました。

自身としてはギター的にどういう作品に仕上がったと感じますか?

 “やりたいことは、ほぼすべて落とし込めたんじゃないかな”と思っています。

やりたかったこととは?

 “デモを聴いて頭で鳴ったものはできるだけ再現する”ということの優先順位が高くて。その次に、アルバムをとおしていろんな聴き応えがあったほうが良いと思っていて、少しずつグラデーションをつけたかったんです。全部同じアンプやギターで同じような音色というよりも、使う機材を変えたり、“明らかに違うフレーズで持っていく部分”がそれぞれにあったり。そういう感じでできたらいいなと。結果、そのとおりになったと思っています。

確かに作品をとおして聴くと、バラエティ豊かな音色が聴こえてきます。そのグラデーションのつけ方っていうのはどういう流れで考えるんですか?

 “この曲はこれだな”っていうのは、確かにあるんですけど全曲ではなくて。曲によっては“このギターもいいし、このギターもいいな”っていう時もあるので、そういう時は“じゃあ、ほかで使ってないこっちにしよう”っていう風になります。あとはギター・ソロで悩んだ時に“今回使っていないワーミーを試してみよう”みたいな考え方もしますね。もちろん“この曲は絶対にこのギターとこのエフェクター、このアンプ”っていう時もあるんですけど、そうでない時に関してはできるだけ俯瞰で見て、トータル・バランスを重視してます。

2019年からXIIX(テントゥエンティ)もスタートしましたが、ユニゾンとはテイストも違いますし自身で作詞作曲もしています。この活動が今作にもたらした影響はありますか?

 “できることが増えたな”とは思っていて、いろいろと幅を持てるようにもなった感じがあるんです。でもユニゾンっていうバンドはすごく特殊で、“障害がものすごく多い障害物競走”というか。“シンコペーションでここは絶対食う”、“コードチェンジがこう”、“ここは16分で”とか、守らなきゃいけないことがすごく多いんです。さっき“できることが増えた”とは言いましたが、やらなきゃいけないことがすごくピンポイントなので、実際にプレイが変わったということはあまりないですね。ただ、いろいろ知ったうえでユニゾンでギターを弾いたことで、“改めてバンドの在り方について自分で再確認できた”というのはあったかなと思います。

ピアノで弾くのとギターとでは
テンションの意味が変わってくる

「Catch up, latency」のBメロはコード・チェンジがかなり忙しい感じですが、ボイシングはどう決めていくんですか?

 田淵(智也/b)から曲をもらう時に“コードはこう”っていう指定の中でも、まず“作曲者が意図してるコードを汲みつつも、ちゃんとフレーズとしてカッコ良いものに落とし込もう”っていうことを考えるんです。これは本当に一番最初にやる作業で。

そのコード進行というのは、どういう形でもらう?

 “A、B”みたいな時もあるし、もうちょっと細かく6thやオンコードまでの時もありますね。でも田淵が言うコードは基本的にはピアノの和音で、ピアノで弾くのとギターとではテンションの意味が変わってくることがあるんですよ。だから“作曲者の意図を汲みつつ、ギターでカッコ良いものは何だろう?”っていう考え方をしていて。「Catch up, latency」のBメロはまさにそれですね。確かけっこう細かくコード進行が送られてきたんですけど、ギターでなぞるとしたら“そうは言っても……”っていうところがあったりして。そこで、“自分ならこうだな”っていう風に作ったんです。田淵から元のアイディアをもらうことで生まれた部分だったりするので、それはおもしろいなと思います。

「Catch up, latency」はギター・ソロもありますが、ジャジィな雰囲気からロックなペンタ寄りのアプローチへのコントラストが楽しいですね。

 おもしろがってもらいたくて、ちょっと落ちる時と出る時のメリハリみたいなのは、あればあるだけ良いと思っているんですよ。ただ、それで音楽的に破綻しないようにっていうのは気をつけていて、“クリーンだったら、ちょっとジャジィな雰囲気で。歪むんだったらロックな雰囲気で”みたいなところで生まれた感じですね。

以前、“ライブとアルバムで演奏するものは別で考えている”と言っていましたが、ギター・ソロもそうですか? 「Catch up, latency」や「Phantom Joke」のソロも和音で攻める部分があるし、「世界はファンシー」はワーミーでサウンドを分厚くしていたりしますよね。ソロはライブのことも考えて、ギター1本でも薄くならないように気をつけていたりは?

 そこはあまり想定していないですね。以前言ったように、曲を作っている時は“音源としてどうか”っていうところだけを考えてやっていて、ライブでのアレンジは“「ライブをやりましょう」ってなった時に考えればいいや”くらいに思っているので。でも、3人で曲を作る段階で“こういうフレーズカッコ良いな”って自分が弾いてる時、バッキングは鳴っていないから……。もしかしたら、そういうところが関係してるのかもしれないです。