The Novembersの小林祐介とケンゴマツモトが語る、EP『合奏する、エンジン』で体現したバンドの現在地 The Novembersの小林祐介とケンゴマツモトが語る、EP『合奏する、エンジン』で体現したバンドの現在地

The Novembersの小林祐介とケンゴマツモトが語る、EP『合奏する、エンジン』で体現したバンドの現在地

2026年5月20日(水)に約3年ぶりとなる新作、EP『合奏する、エンジン』をリリースしたThe Novembers。メンバー4人が集まり、それぞれのパーソナリティを反映しながら1つの作品を生み出すプロセスそのものにフォーカスしたという本作。ギタマガWEBでは、小林祐介(vo,g)とケンゴマツモト(g)にインタビューを敢行。バンドの結成20年を振り返るとともに、現在のサウンドにいたるまでの変遷や、EPに込めたコンセプトについて、じっくりと語ってもらった。

取材・文=森部真衣 ライブ撮影=宮下太輔

ケンゴマツモト(g)
ケンゴマツモト(g)

ボードがデカいことにドヤ顔してないです。
ツラいと思ってます(笑)。
──ケンゴマツモト

The Novembersは昨年バンド結成20周年を迎えましたが、振り返ってみていかがですか?

小林 ケンゴ君ともよく話しますね。“あれも乗り越えたし、これも達成した”というのが積み重なって、いろんなことがあった重層な20年ではあったんですけど、良くも悪くも気づいたら20年経っていたというのが正直なところです。

ケンゴ そのとおりです。

この20年で一番心に残ってる出来事は何でしょうか?

小林 僕はシンプルで、やっぱり4人で初めてスタジオに入った時のことが、いまだにすごく大きな出来事です。

ケンゴ うわー!

小林 僕は昔、とやかく“フジロックに出ようぜ”ってケンゴ君に言っていたので、フジロックに出たことも夢を叶えたことの1つではあるんですよ。でも昔よりも今のほうが良いし、そういう“このライブ良かったよね”と思うようなことが、これからもまだあるだろうなと思ってるんですよね。

なので僕にとって一番特別なのは、4人で初めて下北沢のリハーサル・スタジオに入って、なんとなく音を出した瞬間に、“お、いいじゃん”とか“なんかかっこいいな”と思ったのが今日まで続いているということです。

ケンゴさんはいかがですか?

ケンゴ コロナ禍の時、バンドのみんなとずっと会っていなかったんですけど、久しぶりにスタジオに入ることになったんですよ。何年もスタジオに入らないことなんてこれまでなかったから、ちょっと緊張して行ったんですよね。でも、スタジオに入ったらめっちゃ普通だったんです。

小林 ありえないぐらい普通だったよね。

ケンゴ ありえないぐらい普通だったんですよ。それがずっと印象に残っている出来事です。

小林 そうだね。“先週ぶり!”ぐらいの気持ちだったよね。

ケンゴ うん。“これがバンドだな”と思いました。

ギター・プレイやサウンド・メイク的な面で変化を感じる部分はありますか?

ケンゴ いろいろ変化はしているんでしょうけどね。

小林 ケンゴ君なんて、最初は一番エフェクター少なかったもんね(笑)。

そうなんですか!?

ケンゴ そうそう。チューナーも持ってなかったから。

小林 チューナーも持ってなくて、安いプラスチックの歪みとディレイがあるかないかぐらいの状態で(笑)。

ケンゴ あっても電池が切れてるとかね(笑)。

小林 “アダプター貸して“とか言ってたよね。“いや、オレも使うんだけど”みたいな(笑)。

ケンゴ アダプターを買う金がなかったんだよ。

小林 ケンゴ君から言わせてみれば、“それはシンセで弾けよ!”ということも“ギターで弾いて”とお願いしていたから、仕方なく機材がここまで増えちゃったんだよね(笑)。

そうやって機材を集めていった結果、今の量になったんですね。

ケンゴ そう。それなのに、“お前、ボードがデカいんだよ。重いんだよ”とスタッフから誹謗中傷を浴びるんですよ。

小林 “半分にして”とかね(笑)。

ケンゴ できたらしたいよ。ボードがデカいことにドヤ顔してないです。ツラいと思ってます(笑)。

小林さんがこの20年で変化したと思う部分は?

小林 今はボタン1つでギターの音が出せるし、面白い音が作れるじゃないですか? だからエクストリームな表現のために、生の機材を使って人間が演奏することの希少性が日々高まっていると思うんですよ。現実世界では、そのプロセスがあったからこそ生まれたサウンドや楽曲、体の使い方がどうしてもあるんですよね。出てくる音の結果も大事なんですけど、僕はそのプロセスのほうが大事だと思っているんです。

曲作りだけでなく人生そのものにおいても、“どこにたどり着いたか”というよりも、“どうやってたどり着いたか”のほうが僕にとっては重要なんですよ。なので、好きなものを集めていった結果である今の機材たちや、必要だから集めてきた楽器を全部含めて、“自分の人生の大事なプロセスの果てにある今日の出音”だということに、すごく意味があると改めて思うんですよね。

今持っている機材や楽器が集まった経緯も、楽曲制作のプロセスの一部だと。

小林 僕たちの機材はただの機材ではなく、“自分のいろんなものが詰まった今日の象徴”なので、単純に替えがきくものでもないし、仕事道具以上の思い入れやドラマを見出しちゃうんですよ。これからはむしろそういうプロセスが、その人である理由とか、その人のユニークさとどんどん密接になっていくと思います。“積み重ねて今日があるんだ”という感情を大事にするようになったことが、この20年の一番の変化ですね。

小林祐介(vo,g)
小林祐介(vo,g)

意味もなく弾かないということが、
意味のあるギターを弾くキッカケになった。
──小林祐介

『ANGELS』(2019年)以降、打ち込みが入ったことでサウンドの幅が広がったと思います。以前はシンセサイザーのような音もギターで再現していたと思うのですが、現在ギターはどんな役割を果たすものだと思いますか?

小林 ケンゴ君的にはどうですか?

ケンゴ やっぱり、ギターは常に“かっこいい“という役割を果たしているんじゃないんですかね。

小林 かっこいい、ね(笑)。

ケンゴ そう。人がギターを持ってステージに立ってるだけでOK、みたいなところがあるじゃないですか? いかにトラック・メイキング的に替えがきこうと、“その人がギターを持ってそこにいる”ということは替えがきかないと思います。

小林 それと同時に、The Novembersはシーケンスやシンセサイザーを導入したことによって、よりギタリストの存在が浮き彫りになった感じがありますね。こういったギターの取材で言うのもアレですけど、そのタイミングから僕がハンド・マイクになることも増えたんですよ。

そうですよね。

小林 いろんなシーケンスの音がある中でケンゴ君がギタリストとして出す音は、ギター然としてるものもあれば、“どっちがシーケンス?”と、わからなくなるようなものもあるんです。ケンゴ君がいることで、シーケンスと生の人間が融合するという、世界観の統一みたいな役割もあるんですよ。

僕は逆に、自分がギターを弾かなくても成立する楽曲ができたことによって、“じゃあギターを弾くのはいつだ?”という必然性をすごく意識するようになりました。意味もなく弾かないということが、意味のあるギターを弾く一番大きなキッカケになったんですよね。ギターを弾くのが好きだから、なんとなく僕もギターを持ってそこに立っていたんですけど、そういう時間がなくなって意味があることだけをやるようになりました。これはバンドの中で新しく生まれた着眼点だった気がしますね。

今回のEP『合奏する、エンジン』に関して、コンセプトや目指すサウンドは制作前に決めていたのでしょうか?

小林 今回に関しては両方あるよね。

ケンゴ あるね。

小林 “こういう風にやってみよう”というのもあったし、“メンバーがこういう個性を持っているから、こんな風に演奏しているところが目に浮かぶ”というのもありました。実際にメンバーが音を出したことで、“あ、これで良かったんだ”と腑に落ちて進めたところもあります。本当にいろんなプロセスがありましたね。

デモ音源はおもに小林さんが作っているんですよね。現在の作曲はギターを使っているんでしょうか?

小林 ギターを使って作ることももちろんありますけど、本当に様々です。

では、鍵盤や打ち込みから作り始めることも?

小林 そうですね。鍵盤も使いますし、サンプリングをずっと鳴らしているところにメロディだけを付けて、あとで音楽にすることもあります。逆に、土台だけ先に作って最後にメロディを乗せることもありますし、本当に楽曲ごとに違うんですよ。

セッション形式で各楽器のフレーズを決めていくこともあるのでしょうか?

小林 セッションもあります。あとは、あるフレーズをずっとループさせておいて、みんなで演奏してほかのフレーズを引き出してみるやり方の時もありますね。

ケンゴマツモト(g)
ケンゴマツモト(g)

“このシンセの音、オレだったらギターで出せるな”と
考える時はありますね。
──ケンゴマツモト

ここからは各楽曲のお話も聞かせてください。「HERO」はサビのギターのピッチが上下することによって楽曲にうねりが出ていますよね。

小林 ステイしているほうの音はケンゴ君が弾いていて、アーミングしている音は僕がジャズマスターで弾いています。ステイしている音とベンドしていく音が合わさることで、“ゴワゴワゴワゴワ”という独特の効果が得られました。

本当に『合奏する、エンジン』というタイトルに沿うような、2人で弾いたことによる効果が生まれているんですね。

小林 まさに干渉することで生まれたゴワゴワ感というか、モアレ感ですね。ケンゴ君のシグネチャーみたいになっているDigiTech XP-300(マルチ・エフェクター)のシンセ・サウンドと、生で“カンカンカンカン”って弾いた音の両方をレイヤーしています。

2番のAメロに入っている、左右に動くフレーズはベースの音でしょうか?

小林 ハイポジの音だからギターみたいに聴こえるんですけど、実はベースの音なんですよ。高松(浩史/b)に“なんかやって”と言ったら高い音で“ティロリロ、ティロリロ”と弾き出したので、“じゃあ低い音どうすんだよ!”となってシンセ・ベースを“ブォーン”と鳴らしています(笑)。

シンセのサウンドをギターで考えることはありますか?

ケンゴ 逆に祐介のデモに対して、“このシンセの音、オレだったらギターで出せるな”と考える時はありますね。その前提でデモが組まれている時もあるので。

小林 そうそう。ケンゴ君が演奏するだろうなという前提の場合は、細かいパッセージのフレーズというより、ちょっとおおらかで、たおやかなフレーズにしています。そのほうがケンゴ君の機材と合うから、やっぱり意識していますね。

「The Singing Engines」はこれまでの楽曲と比べてもかなりヘヴィだと思いますが、このリフはどのように考えましたか?

小林 僕がギターのチューニングをドロップCまで下げて、“ちょっとやってみよう”と思いついたリフですね。これまでドロップ・チューニングのヘヴィな曲をそんなにやってこなかったので、システム・オブ・ア・ダウンやデフトーンズ、KOЯNのような楽曲を自分たちなりにやってみようと思って作りました。

随所でハウリングのような音が入ると思うのですが、これはどのように出した音ですか?

小林 あれは僕がデモを作ってる段階でたまたま鳴っちゃったハウリングや、ケンゴ君が違う曲をレコーディングしてる時に出したハウリング、それから「The Singing Engines」のレコーディングのセッティング中にたまたま録音されてたハウリングをコラージュした音ですね。

サビの最後の部分で、楽曲のテンポ感に対して音価が長いチョーキングのフレーズが入っていることで、楽曲の重みを引き立てていると感じました。

小林 ケンゴ君には“仁王立ちで弾いてる感じでやって”とか言ってたよね(笑)。

ケンゴ 言ってましたね。

そういうイメージですよね。堂々としてる感じというか。

小林 “偉そうにして”とか言ってました(笑)。

ケンゴ そうそうそう。

小林祐介(vo,g)
小林祐介(vo,g)

この4人が演奏しなかったら、
できなかったものなんだ。
──小林祐介

「遥か彼方」はピッチ・シフターがかかったフレーズによって厳かな雰囲気が出ています。これはDigiTech XP-300の音ですか?

ケンゴ あれって、どうしたっけ?

小林 XP-300も入れたし、あと生のギターもたぶん4本ぐらいアルペジオを録りました。

ケンゴ そうだ、入ってる。レイヤーされてる。

「合奏 -Hold me Hold me Hold me-」は、Bメロの部分で歪みを効かせたフレーズが最初の1回だけ入っていて、引き算された印象を持ちました。

小林 僕たちがあんまりやらなかったような、いわゆるオーソドックスなバンド・スタイルのアプローチでやってみようと思った曲だったので、エリック・クラプトンっぽい“ドゥドゥドゥードゥー”というフレーズを入れてみたんですよ(笑)。

ケンゴ ペンタトニックがバリバリのね(笑)。

小林 僕ら的にはチャレンジだったんですけど、傍から聴くと普通で、それがすごく良いなと思っていて。みんなは“それよくやるよ”って言うんですけど、僕らはやったことがなかったからね。

ケンゴ 逆に新しいよね。

小林 なので、最初は何箇所かそのフレーズを入れていて、サビ直前にも入っていたんですけど、“これを聴いてくれ感”がすごく出てきて、変なエゴを感じたんですよ。それで、“最初の1発だけに賭けよう”ということになりました。そこもケンゴ君に、“偉そうに弾いてくれ”とか“往年の人っぽい感じで弾いてくれ”と言いましたね(笑)。

なるほど(笑)。音源のサビ部分にはアコギが入っていますよね。6月4日(木)Zepp DiverCityでのワンマン・ライブも拝見しましたが、その時はエレキ・ギターで演奏していたと思います。ライブで行なったアレンジなどはありますか?

小林 アコースティック・ギターを弾くことで入る華やかさを、ライブでそのまま表現してももちろん面白いと思うんですけど、今回のライブの流れ的にそこで持ち替えるよりかは、もっとガッツがある感じでやりきりたいなと思ったんですよ。僕がライブでもアコースティック・ギターを弾くと、アルペジオだったり、“ジャンジャンジャン”と強く歪ませてバッキングを弾きたい時に対応できないんですよね。なのでライブは、トレード・オフ的な考えと、今やりたいことのバランスを取って挑みました。

2人が思う、今回のEPの聴きどころを教えてください。

ケンゴ 『The Novembers』(2023年)から何年か経って、“次に行くぞ、打ち破るぞ”という気持ちでバンドが動いていたと思うので、その空気を感じ取ってもらえたら良いなと思いますね。

小林 僕も同じ気持ちはありつつ、今回のEPは4曲収録されていて、それぞれにメンバーのパーソナリティを反映しているというのがコンセプトなんですよ。『合奏する、エンジン』というタイトルどおり、“違う人間が集まって何か1つのことをやるんだ”ということを、概念的にも、1つの事実としても、すごく生々しく記録できたと思うんです。

生楽器を演奏することによって生まれるズレ、バグやミラクルみたいな、“オレたちがいることによって、目の前で何が起こってるんだろう”というのを一番大事なポイントとして作っていったんですよ。“この4人が演奏しなかったら、できなかったものなんだ”ということと、バンドが今それを大事にしようと思えていることが、ロマンみたいなものとして音やフレーズにきちんと詰まっているので、そういったものを感じ取ってもらえたら嬉しいなと思います。

左から、高松浩史(b)、小林祐介(vo,g)、吉木諒祐(d)、ケンゴマツモト(g)
左から、高松浩史(b)、小林祐介(vo,g)、吉木諒祐(d)、ケンゴマツモト(g)

作品データ

合奏する、エンジン
The Novembers

MERZ
2026年5月20日リリース

―Track List―

01. HERO
02. The Singing Engines
03. 遥か彼方
04. 合奏 -Hold me Hold me Hold me-

―Guitarists―

小林祐介、ケンゴマツモト