手にしているアイコニックなギターを始め、その使用機材についても注目を集めているセイント・ヴィンセント。残念ながら実機写真を入手することはできなかったが、今回行なった30分のインタビューの中で教えてくれた内容をもとに、彼女の機材チョイスについても少し考えてみよう。
文=福崎敬太 Photo by Alan Del Rio Ortiz/Stylist=Avigail Collins/Hair=Pamela Neal/Make up=Hinako Nishiguchi
Jacket=Bella Freud/Shirt=Acne/Trousers=Bella Freud/Necklaces=by Ellie Vaile
今作で使ったギターとして答えてくれたのは以下のとおり。
- ミュージックマンのシグネチャー・モデル
- ナッシュビル・チューニングにしたフェンダー・テレキャスター
- ギブソンSG
- 50年代製のマーティン・ギター
- ステラ製アコースティック・バリトン・ギター
- 1967年製コーラル・エレクトリック・シタール 3S19
新たなシグネチャー・モデルとコーラルのエレキ・シタールは、NBC放送の人気トーク番組『ザ・トゥナイト・ショー』で流された以下の動画で確認することができる。新シグネチャーにはゴールド・フォイル・ピックアップが搭載され、サウンドも従来のものとは異なるようだが、それについては別記事で紹介しよう。
テレキャスターはお馴染みのフェンダーDeluxe Nashville Telecasterで、ステージ上のメインとはならないものの2007年頃から長く愛用しているモデルだ。ギブソンのSGも同時期から使っているもので、ハーモニーのBobkatやシルバートーンの1488をメインで使用していた頃に、ステージに控えていたラージ・ガードのスタンダード。昨今は表舞台で見ることはほとんどなくなったが、レコーディングでは今も愛用しているようだ。

50年代のマーティン製アコースティック・ギターは友人に借りたそうだが、モデルは不明。「Down And Out Downtown」の左チャンネルから聴こえるストロークがそれのようだが、サウンド的にスタイル0などの小型モデルではないように思える。NPRによるYouTube動画企画『Tiny Desk Concert』などで抱えている、近年のメイン・アコギであるウォータールーのWL-12や、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックが主催したたオンライン・フェス=“BAM Virtual Gala 2020”で使っていたケイのモデルは小ぶりなサイズのため、アンサンブルに馴染ませるために000〜Dシェイプあたりをチョイスしたのだと思う。
エフェクターやアンプについては、次のように語ってくれた。
アンプはほとんど使っていなくて、コンソールに直接つないでプレイしている。6ワットくらいの小さなスプロ・アンプを持っているけど、基本的には使っていないわね。
歪みはビンテージのテレトロニクスLA-A(コンプレッサー)やオペアンプ・ラボ(OpAmp Labs)のコンソールを使って作っていて、ペダルじゃなくてプリアンプやコンソールでサウンドメイクすることがほとんどよ。あとは古いディレイを使ってオーバーロードさせた感じのディストーションも忘れちゃいけないわね。Echorec2や古いギルドのテープ・ディレイも使ったし、「Pay Your Way In Pain」ではローランドのRE-501 Chorus Echoを使ったわ。
近年のライブではステージ上にアンプを置くことはなく、ラインで出力している。以前はフェンダーのDeluxe ReverbやローランドのJC-120など、ニュートラルなアンプを使うことが多かった。アンプによる味付けはほとんど考えないという方向性はキャリア初期から一貫している。
昨今はペダルボードを自身で操作することはほとんどなくなったが、ステージ上にペダルボードが置いてあった頃は最小限のペダルでシステマチックに組まれていた。海外サイトの情報や以下の動画などでは、イーブンタイドのPitchFactor(ハーモナイザー)、Space(空間系マルチ)のほか、Z.VexのMastotron(ファズ)などが確認できる。ライブでは、Abelton Liveを使って同期を流したりするため、その信号を足下でもMIDIで制御できるようにプログラムしているようだ。
レコーディングやライブ機材はなかなか真似することのできない内容ではあるが、ぜひサウンドの再現に挑戦してみてほしい。