往年のファンクやディスコ、ポップスはもちろん、現代の音楽シーンにも欠かせないテクニックである“カッティング”。中にはエフェクターを通さないクリーン・サウンドで聴かせるスタイルも多いが、コンプレッサーやフェイザー、オート・ワウ、エンベロープ・フィルターなどのエフェクターを使い、独特のカッティング・サウンドを生み出すギタリストも少なくない。
今回は、編集部注目のカッティング系エフェクター16機種をTAIKINGに徹底的に試奏してもらった。TAIKINGが選ぶカッティングに最適なエフェクターとは?
【PR】 取材・文:鈴木誠 機材撮影:八島崇 人物撮影:鈴木千佳
*本記事は、ギター・マガジン2024年8月号の「カッティングに最適なエフェクターを探せ!」を再編集したものです。
目次
試奏ギタリスト:TAIKING(Suchmos)
COMPRESSOR
- コンプレッサーの基礎知識
- CARL MARTIN / Honey Comp
- FREE THE TONE / SILKY GROOVE SG-1C
- HTJ-WORKS / VINTAGE CORE COMPRESSOR -White-
- J. Rockett Audio Designs / AIRCHILD Six Sixty Compressor
- Limetone Audio / focus black
- ORIGIN EFFECTS / Cali76 FET Compressor
- PRS Guitars / MARY CRIES Optical Compressor
- strymon / COMPADRE
- Universal Audio / UAFX Max Preamp & Dual Compressor
- WALRUS AUDIO / Deep Six Compressor V3
ENVELOPE FILTER/AUTO WAH
- エンベロープ・フィルター/オート・ワウの基礎知識
- EarthQuaker Devices / Spatial Delivery
- GFI SYSTEM / ROSSIE
- マキノ工房 / Special Q
- One Control / BUTTER YELLOW AUTO QUACK
PHASER
総評 by TAIKING
試奏ギタリスト
TAIKING(Suchmos)
2019年、デビューからわずか4年で地元・横浜スタジアムでの3万人動員のワンマンを実現し、2021年に活動休止を発表した6人組ロック・バンド、Suchmosのギタリスト。ソロとしては、藤井風やRADWIMPSのライブ・サポートに加え、Vaundyやオカモトコウキ(OKAMOTO’S)のレコーディングにも参加するなど、多方面から高い評価を受ける。今回の試奏では、本人所有の1964年製フェンダー・ストラトキャスターを使用した。
COMPRESSOR
コンプレッサーの基礎知識
CARL MARTIN
Honey Comp
FREE THE TONE
SILKY GROOVE SG-1C
HTJ-WORKS
VINTAGE CORE COMPRESSOR -White-
J. Rockett Audio Designs
AIRCHILD Six Sixty Compressor
Limetone Audio
focus black
*focusの色違いモデルも含めた検索になります。
ORIGIN EFFECTS
Cali76 FET Compressor
PRS Guitars
MARY CRIES Optical Compressor
strymon
COMPADRE
Universal Audio
UAFX Max Preamp & Dual Compressor
WALRUS AUDIO
Deep Six Compressor V3
ENVELOPE FILTER/AUTO WAH
エンベロープ・フィルター/オート・ワウの基礎知識
EarthQuaker Devices
Spatial Delivery
GFI SYSTEM
ROSSIE
マキノ工房
Special Q
One Control
BUTTER YELLOW AUTO QUACK
PHASER
フェイザーの基礎知識
EarthQuaker Devices
Grand Orbiter
MXR
M279 Deep Phase
TAIKING’s Total Impression
最後に16機種をたっぷりと試奏してくれたTAIKINGに、各エフェクト部門の感想を語ってもらった。
自分のセッティングに組み込んで使ってみることが
絶対に大事だと思います。
コンプレッサー部門
コンプレッサーの使い方として、“カッティングするならコンプ入れるよね”みたいな概念が変わってきているような気がしました。バッファーやワイヤレス機材を通ったりすると、ある程度の音が揃う部分もありますから。以前は今ほど積極的に信号をバッファードにするという感覚がなかったのが、ギターのコンプレッサーが重宝されてきた背景なのかもしれないですね。
今回の試奏を通じて興味を持ったのは、UAFXのMaxとか、シグナル・チェインの最後段に置いて“整える用途”に使いたいなと思うモデルでした。スタジオ・コンプが由来の製品は、そういう使い方をするのかと考えたら凄く理解できるものばかりでしたね。
音としてはJ. Rockett Audio DesignsのAIRCHILD Six Sixty Compressorが本当に好みでした。なんだろう……言葉にしづらいんですが、絶妙なサチュレーション感が好みでしたね。それでいて、トーン・ノブでフリケンシー的に“立つ”音域を好みに調節できるのが素晴らしいです。
コンプレッサーを選ぶ時は、“全体を整えたい”とか“出音をサチュらせたい”とか、目的をハッキリさせるといいと思います。レコーディング環境をプチ再現するために現場に持っていく手もありますよね。
エンベロープ・フィルター/オート・ワウ部門
One ControlのBUTTER YELLOW AUTO QUACKは本当にキレが良くて、リフを作るのが楽しくなりそうなエフェクターでしたね。カッコよくしてくれる感覚がありました。サンプル&ホールドがあるEarthQuaker DevicesのSpatial Deliveryも色々と遊べそうでしたし、この手のペダルには、“買って1曲作れたらOK!”というような、インスピレーションを与えてくれる存在としての期待もしてしまいます。
コンパクト系だと音色が1つに限られるので、ステップ・モードが付いてるとか、プリセットが組めるようなものだと活躍の仕方も違ってきますね。そういう意味でGFI SYSTEMのROSSIEも良かったです。
弾いていて面白かったのは、ステップ・シーケンサーのようなサウンドだと、ピッキングの入力の強さをなるべく揃えないとフィルターの動きがキレイに出ないことですね。ピッキングの強さでフィルターの開き具合をコントロールするのが一般的な使い方ですが、それとは逆の技も必要です。つまりペダルに合わせて自分を変えてあげる必要が出てくるわけですけど、そうやって弾き方で合わせにいくのも、ペダル・エフェクトの醍醐味ですよね。
フェイザー部門
フェイザーは、その独特の音色にフレーズを引き出される部分があります。ともすれば曲の時代感を決定してしまうくらいの存在感ですよね。例えば、“ストラトキャスターのハーフ・トーンにコーラスをかけたら80年代!”みたいな感じです。
そんな感覚があるので、バンドや曲を通じて目指す世界観を持っているクリエイティブ系の人は、オマージュにならないように年代感が明確なサウンドは避けてしまう場合もありますが、逆にその時代のムードを狙うのであれば、フェイザーをかければ一発ですよね。やっぱりMXRのPhase 90には、そういうムードがあると思います。
エフェクター選びのアドバイス
こんなにたくさんのアイテムがある中で、ペダル・エフェクトには自分が使いたい機種を選ぶ面白さがあります。ミニ四駆のパーツみたいな感覚というか、理想のカスタムに近づけていく楽しみがあるんです。
とはいえ、新しいペダルはまず自分のコントロール下にある環境に組み込んでみないと、本当のところは結局わからない。僕も試奏をしないでYouTubeで観たものを買っては売ってをたくさんくり返してきましたが、皆さんも自分のセッティングに組み込んで使ってみることが絶対に大事だと思います。
ギター・マガジン2024年8月号
- 特集:カッティング“超”至上主義 Featuring コリー・ウォン
- カッティングに最適なエフェクターを探せ!〜注目のコンプレッサー、フェイザー、オート・ワウ、エンベロープ・フィルター16機種をTAIKINGが徹底試奏