海外ギタリストのスゴ技が光る、90年代シティ・ポップの名曲 海外ギタリストのスゴ技が光る、90年代シティ・ポップの名曲

海外ギタリストのスゴ技が光る、
90年代シティ・ポップの名曲

「海外ギタリストのスゴ技が光る、シティ・ポップの名曲」シリーズ。今回は90年代編! お馴染みの米西海岸スタジオ名手たちの参加作のほか、佐橋佳幸とジョン・ホールのコラボなど、インパクト大なラインナップが並ぶ。海外ギタリストが日本のシーンに残した90年代初頭の名演を聴いていこう!

選盤・文:金澤寿和

杉山清貴『SPRINKLE』(1990年)

マイケル・ランドウが大貢献!

L.A.録音によるソロ第5弾で、全曲がトム・キーン編曲の下、マイケル・ランドウ(g)、ジョン・ロビンソン(d)、ニール・スチューベンハウス(b)によるバンド・サウンドで構築された好盤。

ランドウはシングル「いつも君を想ってる」、タマラ・チャンプリンとのデュエット「ギャツビー達の長い夜」のほか、「TELL ME THE TRUTH」、「IN THE FAR EAST」、「ALL OF MY LOVE」などで派手なソロを取り、貢献度マックス。ティモシー・シュミットやジェイソン・シェフもコーラスを取る豪華盤だ。

佐藤博『Good Morning』(1990年)

アル・マッケイの軽快なグルーヴが炸裂

L.A.と東京でレコーディングされたオリジナル10作目。キャリア屈指の名盤『awakening』(82年)以降、打ち込みを駆使したマルチ・プレイを遺憾なく披露してきたが、ここではパトリース・ラッシェン(vo)、ジョン・ロビンソン(d)やネイザン・イースト/フレディ・ワシントン(b)らを起用。

ギターにはアル・マッケイとマイケル・ランドウが参加し、それぞれに持ち味を全開にしている。特に小気味よくグルーヴィなカッティングをキメるアル・マッケイに脱帽。

加藤和彦『BOLERO CALIFORNIA』(1991年)

ゴージャスな音像のラスト・ソロ作

09年に急死した加藤の、最後のオリジナル・ソロ作。アレンジにニック・デカロ、エンジニアにアル・シュミットを起用。ビッグ・バンドを配して、L.A.のキャピトル・スタジオでレコーディングというゴージャスな作りになっている。

ギターは名手ディーン・パークス。アコースティックを中心に、どんな楽曲にもしなやかに対応するマルチなプレイ・スタイルが彼らしく、見事としか言いようがない。全曲を共作した人気作詞家で奥様の安井かずみ、そしてニック・デカロの遺作でも。

角松敏生『ALL IS VANITY』(1991年)

米西海岸の名スタジオマンが揃い踏み!

スティーリー・ダンやジノ・ヴァネリをサンプルに、アートとしての都市型ポップスを追求した重厚作。

東京とL.A.で録音され、L.A.セッションにはラリー・カールトンやバジー・フェイトン、マイケル・ランドウが参加。「彷徨〜Stray At Night」ではバジーとランドウがソロを弾き分けるなど、贅沢なキャスティングが目立つ。タイトル曲でのバジーのエモーショナルなプレイも聴きモノ。

バラードにもロマンスや甘さはなく、祈りにも似た透明感、スピリチュアルな精神性が充満する。

松任谷由実『Tears And Reasons』(1992年)

ランドウの“アツい”ソロが聴ける「Carry On」

デイヴ・ギルモア(ピンク・フロイド)好きのユーミンが、“ソロがスゴい”とインタビューで語ったのが、本盤のエピローグ「Carry On」。アルバムのメイン・ギタリストは松原正樹だが、このソロを弾いたのはマイケル・ランドウ。

空間系にシフトした現在の彼からは聴けないスタイルで、楽曲のツボ、この曲の立ち位置をよく理解したうえでのレコーディングだったに違いない。ランドウが参加したもう1曲、「瞳はどしゃ降り」では、リバーブたっぷりのバッキングが楽しめる。

佐橋佳幸『TRUST ME』(1994年)

日本の名手がジョン・ホール愛を示したソロ作

現在の日本屈指のセッション・ギタリストにして名プロデューサー、山下達郎バンドでもお馴染みの佐橋佳幸が、達郎御大のバックアップで完成させた唯一のソロ・アルバム。

すると“ここぞ”とばかりに憧れのジョン・ホールと2曲共演。竹内まりやが日本語詞を乗せたオーリアンズのカバー「Time Passes On」、自作インスト「Little Crimes」でホールをフィーチャーし、限りない愛情を示している。

08年のデラックス・エディションには、ホールとのスタジオ・セッション映像も。

ムッシュかまやつ『ゴロワーズ』(1994年)

和物クラシックとアシッド・ジャズとの邂逅

コーネリアス小山田圭吾とトシ矢島のプロデュースで、当時人気の高かったアシッド・ジャズ系ミュージシャンと共演したロンドン録音盤。

近年再評価が著しい「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」のラップ入り再演版も収録。ジェネレーション・ギャップをモノともしない自由な発想と軽やかなスタンスが、いかにもムッシュらしい。

ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ジェイムス・テイラー・カルテット、スタイル・カウンシルのメンバーに、スノーボーイなどが参加。ギターはBNHのサイモン・バーソロミュー。

稲垣潤一『Revival』(1996年)

クリストファー・クロスもギターを演奏!

稲垣潤一の代表曲やヒット曲を、人気AORアーティストのクリストファー・クロスがプロデュースしたリバージョン・アルバム。

これはマスターテープからファンの耳馴染んだ稲垣の“濡れ声”だけを残し、オケはすべて録り直してしまう大胆な企画作で、歌声に大きな魅力を持つ両人の邂逅あってこそ。選曲も稲垣自身に拠る。

ギター・プレイに定評を持つクリスも、「オーシャン・ブルー」、「P.S.抱きしめたい」、「メリークリスマスが言えない」、「時を越えて」の4曲でギターをプレイ。