今回は、コードの構成音を指板上ですぐに見つける方法を紹介します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
第22回と第23回では、自分の知っているコードを変化させて別のコードのフォームを作る方法を紹介しました。また第24回では、まったくのイチから独自のフォームを作る方法を紹介しました。どちらの方法においても、自分が作ろうとしているコードの構成音が、ギターの指板上のどの位置にあるかを知ることが重要でした。
また、これまでにも何度か説明してきたように、C(ド)をルートとするコードを作る時は、Cメジャー・スケールを「ドレミファソラシド〜」と弾きながら、それを「12345671〜」と数えることで、目的の音を見つけることができます。しかし、毎度毎度メジャー・スケールを弾いて音を探すのも面倒です。そこで今日は、その作業を少し楽にする方法を紹介します。
オクターブ、完全5度、長3度の位置関係を覚えよう
まず、前回も掲載した音の配置図を見て下さい。これはCがルート(’1’)である時の、それぞれの音の位置関係を示したものです。
この図を丸暗記できれば良いのですが、なかなかそうもいきません。そこでお薦めなのが次の手順です。
- ‘1’(ルート)とそのオクターブ上の’1’の位置関係を覚える。
- 次に、’1’と’5’(完全5度)の位置関係を覚える。
- 次に、’1’と’3’(長3度)の位置関係を覚える。
‘1・3・5’は、最も基本的なコードであるメジャー・トライアドの構成音ですし、これらの位置関係を把握してしまえば、その他の音の位置も覚えやすくなります。
では順番にいきましょう。
オクターブの位置関係
まず‘1’同士(オクターブ)の位置関係です。’1’は指板上の色々なところにあるので、考えられる組み合わせは多数ありますが、「コード・フォームを作る」という目的に絞れば、次の4つを覚えれば十分でしょう。
なお、これらの図にフレット数を書いていないのは、音同士の位置関係はどのポジションでも同じだからです。
※オクターブの位置関係は、「オクターブ奏法」を練習していると自然に身に付きます。オクターブ奏法とは、オクターブ違いの音を同時に鳴らしながら弾く奏法のことです。2つの音を一緒に鳴らすため、単音で弾いた時よりも丸くふくよかなサウンドになります。また、オクターブ奏法の名手といえばジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリーですが、奏法自体はあらゆるジャンルで使われています。興味のある方はネットや教則本で調べてみて下さい。
完全5度の位置関係
次に‘1’と’5’(完全5度)の位置関係を覚えましょう。次のとおりです。
※完全5度は、主には「ルートに対して1つ上の(=細い)弦の2フレット上」にあり、これはハードロックやへヴィメタルで多用される「パワー・コード」の形ですので、馴染み深い人も多いと思います。ただ、ギターのチューニングの関係上、3弦と2弦における完全5度は「ルートに対して1つ上の弦の3フレット上」になりますので、この点はご注意下さい。
また、先ほど覚えたオクターブの位置関係をさっそく使って、1オクターブ高い’5’の位置も覚えてしまいましょう。
長3度の位置関係
次に‘1’と’3’(長3度)の位置関係を覚えます。
※長3度は、主には「ルートに対して1つ上の弦の1フレット下」にありますが、これまたギターのチューニングの関係上、3弦と2弦における長3度は「ルートに対して1つ上の弦の同じフレット」になります。
そして1オクターブ高い’3’の位置も覚えます。
以上で、’1と1’、’1と5’、’1と3’の位置関係がわかりました。なお、これらは単に視覚的に覚えるのではなく、必ずギターで音を同時に鳴らして、そのハーモニーを耳で聞いて覚えることをお薦めします。そうすれば、仮に位置を間違ってしまっても、ハーモニーを聞くことで「あ! ここじゃなかった!」とすぐに判断できるようになります。
ショートカットの利用法1
以上で覚えたショートカット(と呼ぶことにします)を、どう活用するかを説明します。
まず次の図は、ショートカットを使わない例です。ルートに対して1オクターブ+長3度にある’3’の位置を見つけるために、Cメジャー・スケールをドレミファソラシドレミ(1234567123)と弾いています。この方法では10個の音を弾かなくてはなりません。
次の例はショートカット使ったものです。まず’3’を見つけ、その’3’から1オクターブ上の’3’を見つけるという方法です。弾く音はたったの3つです。
これに慣れてくると、次のように瞬時に目的の音が見つけられるようになります。
初心者の場合は、ここまでできるようになるにもある程度の日数がかかると思いますが、ぜひ試してみて下さい。決して無駄にはなりません。
次は、’1・3・5’を軸として他の音の位置を覚える方法を説明します。
ルート、完全5度、長3度の周囲にある音を徐々に把握する
‘1・3・5’と同じように、’2・4・6・7’を個別に覚えていく方法もありますが、その方法は少し退屈です。そこでここでは‘1・3・5’を軸として、その周囲にある音を把握する方法を紹介します。
たとえ話になりますが、あなたが新しい土地に引っ越してきて、最初の生活圏が、自分の家、学校、コンビニの3つだったとします。その3つを軸にすれば、例えば公園、友達の家、その他のお店などの位置も把握しやすくなり、生活圏も広がっていきます。ギターの指板も、これと同じような感覚で少しずつ把握していけるはずです。
そこでまず次の図を見て下さい。これはルート(’1’)の周囲にある音を示したものです。’1’のあるフレットから上方向には、’♭9’、’9(=2)’、’♯9(=♭3)’があります。下方向には、’7’、’♭7’、’6’があります。
※ポジションごとに想定されるメジャー・トライアドのフォームとその指使いを薄い色で示しました。また人差指でセーハしているフレットよりも左にあるフレットには、度数はあえて記入しませんでした。
次は、‘5’の周囲にある音を示した図です。上方向には’♯5’、’6’、’♭7’があり、下方向には’♭5’、’4’があります。
次の図は、‘3’の周囲にある音を示したものです。上方向には’4’があり、下方向には’♭3’と’9(=2)’があります。
このように、’1・3・5’を軸とすれば、他の音の位置も把握しやすいわけです。
ショートカットの利用法2
今覚えたショートカットの活用例も紹介しておきましょう。
まず次の譜面と図は、ショートカットを使わない例です。’7’の位置を見つけるために、Cメジャー・スケールをドレミファソラシ(1234567)と弾いています。この方法では7個の音を弾かなくてはなりません。
次の例はショートカット使ったものです。1オクターブ上の’1’を見つけ、それを1フレット下げて’7’にするものです。
これも慣れてくれば、次のように瞬時に見つけられるようになります。
以上で紹介したショートカットをぜひ試してみて下さい。
さて、次回からはコード進行の話に移ります。その最初のテーマは「ダイアトニック・コード」です。
本講座の関連コンテンツ
指板図くんのギターコードブック
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!