2025年7月に2ndアルバム『moisturizer』をリリースしたウェット・レッグ。『moisturizer』ではサウンドもビジュアルも一新し、新たな世界観で多くのファンを獲得。そして2026年2月に3年ぶりとなるジャパン・ツアーを開催した。ギタマガWEBではジョシュア・モバラキ(g,syn)にインタビューを敢行。ギタリストが3人もいる正真正銘のギター・バンド内での自身の役割、そして今回のリアン・ティーズデール(vo,g)とヘスター・チャンバース(g)の変化について語ってもらった。ライブでの使用機材は有料会員限定記事にて後日公開!
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 人物撮影=Boris Halas
オレもヘスターもケヴィン・シールズの大ファンで、
時々その影響が聴こえると思う。
ギター・テックから聞きましたが、昨日は楽器店に行ったそうですね。何かめぼしいものを見つけましたか?
いくつか見つけたけど、ちょっと興奮しちゃってね。“落ち着こう。家に帰ってじっくり調べてからだ”と思ったんだ(笑)。あまりに興奮していると、日本円の額面がいくらなのか、適切な値段なのかもわからないままノリで買っちゃうことになるからさ。
あるあるですね(笑)。
オレは60年代のホワイトのジャガーを探していて、ヘスター(チャンバース/g)はオムニコードを狙っていたけど、オリジナルと現行品のどちらが良いのかをまだ決めかねている。ペダルとかも常に見ているし、スタジオ用にいろんなものを少しずつ揃えているところなんだ。今はスペースがないから、少しずつ物色しているんだよね。オススメのギター・ショップはあるかな?
御茶ノ水エリアならFINEST GUITARSがあなたに合うと思います。
OK。FINEST GUITARSね。覚えておこう。
G-CLUB TOKYOもオススメで、ぜひ59年製のバースト・レス・ポールを拝んでみてください。代官山のGUITAR TRADERSも驚異的なビンテージの品揃えで、スモール・ガード期のSGなら20本くらい見つけられると思います。
オレたちはようやく機材を集められる段階にきたんだ。今まではお金も何もなくて、とにかく音楽をやろうとしていただけでね。こうやっていろんな楽器を触ったり使えたりするのは本当に贅沢だよ。ずっと手元に置いて、ステージでも弾き続けたいギターに出会うのがすごく楽しみなんだ。日本製のギターも欲しい。かなりクールなものがあるのは知ってるんだよ。
今回はウェット・レッグの機材やサウンドメイクについて詳しくインタビューさせてください。あなたはリアン(ティーズデール/vo,g)とヘスターの機材についてもアドバイスしているそうですが、どのようなことを話していますか?
オレたちはみんな……特にオレとエリス(デュランド/b)は機材が大好きなんだ。たぶんオレのほうがエリスより少しだけオタク度が強いね。で、どんなことを手伝っているかというと、“そのままでかっこいいんだから気にしすぎなくていいよ”って彼女たちの背中を押すことが多いかな。オレたちはすごくトラディショナルなセットアップを使っていて、モデリングとかデジタル・アンプは一切使わないんだよね。
そこもすごく好感が持てました。
今回のツアーはいつもと違うアンプでやっていて、全部の機材を持ち運べない時はレンタルする。そういう時、彼女たちが普段慣れていたり狙っているサウンドに少しでも近づけるように手伝っているという感じだね。同じモデルのアンプでも、レンタル会社や個体が違うだけで全然音が変わるから。でも彼女たちはとても直感的だし、ちゃんと意見も持っているよ。オレが男だからって、“ギターはこうしろ!”みたいなことを押しつけたくはないんだ。
レコーディングやライブで、“こんなサウンドが出したいんだけど?”と相談することも多いんですか?
もちろんだよ。たまに彼女たちはすごく曖昧なこと言うんだ。1stアルバム(『Wet Leg』/2022年)の「Angelica」をオレがプロデュースしてレコーディングした時のことを覚えている。イントロのギターを録っている時にヘスターが、“もっと楽しい感じにしたい”って言ったんだ。かなり曖昧だよね(笑)。でも、それがオレにとっては面白いんだ。いろいろいじって遊んで、彼女たちが“これはクールで楽しいよ。グッドなサウンドだね”となるまでやれるからさ。でもヘスターは自分の意見を持っているから、逆にかなり具体的な要望もあったりする。時々“これどう思う?”って聞かれることもあるよ。オレが“それは好きじゃないかな”って言うと、彼女は“わかった。じゃあ変えるね”と対応してくれる。その逆もあるけどね。
「Angelica」の冒頭のサイケデリックなサウンドはどうやって作ったんですか?
あの頃は予算もほとんどなくて、ウェット・レッグがどうなるかもわからなかったし、全部遊びでやっていたんだ。オレは家でレコーディングしていたよ。ヘスターはVOXアンプを持っていてね。たしかAC15かAC10だったかな? 真空管モデルだけど、モダンな低価格帯のアンプだったよ。でもサウンドはかなりクールだったからギターは全部それにつなぎ、その音にKramer Master TapeっていうWavesのプラグインを通したんだ。Kramer Master Tapeはテープ・マシンによるレコーディングのキャラクターを出せるだけじゃなく、フィードバック・ノブとエコー設定もあるんだよ。すごくベーシックなプラグインだけど、オレは気に入っていた。あとはトレモロやスプリング・リバーブも少し使ったかもしれない。特別なことは何もなく、基本的な感じだったね。レコーディングでは全員同時に演奏したよ。
ウェット・レッグはギタリストが3人いますが、それぞれどのような役割を担っていますか?
役割を明確に決めているわけではなくて、どうやって曲を書いたかによって状況が変わってくるね。だいたいオレはリズム・ギターを弾いているよ。今回のアルバムもそうだけど、リズムのパートをたくさん作って、時々ちょっとしたリフを加えたりしているんだ。でもヘスターのギター・メロディへのアプローチはウェット・レッグのサウンドにすごく重要だから、あまり手を加えすぎないようにスペースを残している。リアンも独特のセンスとサウンド、スタイルがあって、オレはそれがすごくクールだと思っているよ。それに関して本人が気づいてないかもしれないけどね。
そうなんですか?
時々オレたちのほうから、“いや、それはすごく良いよ!”って言わないといけないこともあるくらいだ。オレたちはリアンが直感で生み出すものを積極的に受け入れているよ。基本的にはリズムに関するプレイが多いけど、時々リードでもそういう状況が見受けられるんだ。
3人が共通して影響を受けたギタリストはいますか?
オレもヘスターもケヴィン・シールズの大ファンで、時々その影響が聴こえると思う。露骨に意識したようなサウンドはやりすぎないようにしているけど、あの独特な時代感と、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが生み出したサウンドは、そもそも真似できるものじゃないけどね。できる範囲でちょっとだけ取り入れている感じだよ。
ケヴィン・シールズ以外だとジョージ・ハリスンだね。オレたちはみんなビートルズが好きなんだ。この2人はスタイルが全然違うけど、両方の要素を引き出すのが好きだね。そしてもちろん誰もがそうであるように、子供の頃に初めて聴いた音楽の影響を無意識に受けている。オレが10代の頃はテレビから流れる音楽文化が大きくて、ミュージック・ビデオを観たりしていたんだ。2000年代に入ってから2010年代に入るまでの頃だね。
リアンの好きなギタリストは知っていますか?
リアンについては、正直なところフェイバリットなギタリストがいるのかはオレは知らない。彼女たちがウェット・レッグを始めた時、それまでにやってきた音楽とは正反対のことをやろうとしていたんだ。シンガーソングライターっぽいものから全然違う方向に行こうとしたわけだね。
シンプルなインディー・ロックへと舵を切ったと。
リアンはアート寄りの人たちからインスパイアされている。例えばビョークやキャロライン・ポラチェックといったアート寄りなポップが好きだったんだ。だから彼女にとって3コードを演奏するのは完全に別方向だったわけで、それが楽しかったんだと思う。たぶんヘスターも似たような感じで、アート・ポップはそこまでだったかもしれないけど、現代風のフォーキーな音楽からの影響が強いんじゃないかな?

伝統的なことをやったあと、
それとは逆のことをやって楽しんでいるんだ。
そして今回からリアンはB.C. RichのMockingbird Acrylicを、ヘスターはKramerのJersey Starを使うようになりました。以前はフェンダー・ギターを愛用していた2人が、このようなハードなギターを手にした理由とは?
彼女たちは単純に、“楽しそう!”と思えるギターを選んでいるんだと思う。スタジオはビジュアルじゃなくて完全にサウンドだけで選ぶ場所だから、ちょっとでも違いがあるなら1%でもサウンドが良いと思ったほうを選ぶ。でもステージではそこまで細かいニュアンスが求められることはないから、見た目がかっこいいギターを選んだんじゃないかな? 世の中的にもそういう方向に向かっていると思うしね。例えばフィービー・ブリッジャーズも尖ったメタル・ギターを使っていたのを見たんだ。何だったのかは忘れたけど。
たしかに、そういう変形ギターを持つ人が海外を中心に増えた印象です。しかもメタルやハードコア以外の人たちが。
オレたちの世代のバンドはフェンダーのオフセットみたいなクラシックなシェイプを選びがちで、それにちょっと飽きたんだと思う。だから違うシェイプを試してみたりしているんだ。話は戻るけど、フィービー・ブリッジャーズが明らかにジャンル違いのギターをプレイしているのを確かに見たことがある。なんだっけ(スマホで画像を探しながら)……これだ!
B.C. RichのExtreme Warbeastですね。
リアンは今そういうサイクルみたいな感じだね。だからオレたちは伝統的なことをやったあと、それとは逆のことをやって楽しんでいるんだ。まったくのナンセンスだったとしてもかまわないよ。またもとに戻ったりしていくからね。大きく異なることを並べて、それらが相反しているからこそ良いんだ。
リアンとヘスターは自身のギターについて、“ここが気に入っている”など、何か発言はしていましたか?
ヘスターはフロイド・ローズを気に入っているよ。実際かなりクールだよね? 今はギターテックがいるから使えているところもある。フロイド・ローズのセットアップやメンテナンスを好んでやりたがる人はあまりいないんだ。オレは持ったことはないけど、完璧な状態をキープするのは難しいって聞くよ。でもバッチリ設定できればすごく楽しいんだ。今は自分たちでギターの面倒を見なくていいから、彼女はそれを楽しんでいる。
リアンのギターについては、あれは彼女の中で一番クレイジーだと思う。1stアルバムのビジュアル・イメージや美学は、オーディエンスに柔らかさや優しさ、そして快適な印象を与えるものだったけど、今回の2ndアルバムではハードに見せる方向に切り替わった。それで何かを少しだけ変えるんじゃなくて、思い切って尖ったことをしようと考えたんだ。その1つがMockingbirdを使うことだったんだよ。
作品データ

『moisturizer』
ウェット・レッグ
BEATINK
BRC790
2025年7月11日リリース
―Track List―
01. CPR
02. liquidize
03. catch these fists
04. davina mccall
05. jennifer’s body
06. mangetout
07. pond song
08. pokemon
09. pillow talk
10. don’t speak
11. 11:21
12. u and me at home
―Guitarists―
リアン・ティーズデール、ヘスター・チャンバース、ジョシュア・モバラキ


